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  • 執筆者の写真HafuTalkProjectTeam

「ハーフを考えよう!」のサンドラ・ヘフェリンさんにインタビューしてみた!

更新日:2018年7月14日


インタビュー企画第三弾は、サンドラ・ヘフェリンさんです!

サンドラさんはウェブサイト『ハーフを考えよう!』や書籍『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』(中公新書ラクレ)、『ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(メディアファクトリー)などで、「ハーフ」に関する情報発信を続けていらっしゃいます。この記事は前編・後編に分かれています。まずは、<発信>を始めたきっかけについて伺ってみました。




sandra
サンドラ・ヘフェリンさん (写真:保高幸子 Sachiko Hotaka)


***



Q:サンドラさんは、「ハーフ」のテーマなど、いろいろなテーマで社会に発信していらっしゃいます。本を書くようになった経緯を教えてください。



経緯っていうのは、面白くて、元々は全くハーフと関係ないんですよ(笑)



Q:おー意外(笑)。まぁ、そういうこともありますよね。



わたし、日本に来てもう20年になるんですけど、日本に来て三年の時、日本が「節約ブーム」だったんですよ。「生活の中でこのようにしたらエコですよ」とか「こうやったらお掃除が楽になりますよ」など、そういったテーマの本がベストセラーになっていて。


そこに目をつけたある出版社が、ドイツ人にも倹約家のイメージがあるのでドイツ人に節約本を書かせたら売れるんじゃないかと考えて。それで日本語で書ける人っていうことでわたしに話が来たんですよ。そのときわたしは23歳で、特に家事が得意だとか節約が得意だというわけではなかったのだけれど、ドイツの取材をしながらだったら書けますよって。そしたら、さすがその出版社の方が練ってくれた企画だけあって大当たりしたんですよ。わたしが何冊か出した本の中で、唯一のベストセラー(笑)。


それで、わたし書くことが好きだったから、それから自分で別のテーマの本の企画を作って出版社に売り込んだりとかして。最初の本がきっかけで、「書く」方向に進めた。


それから節約のテーマの後にも何冊か、「ハーフ」とはぜんぜん違うテーマで書いて。そしたら、わたしも若かったし、テーマ的にも行き詰ってきて。なにがやりたいのかもわかんなくなって。それでどうしたかというと…。就職をして、7年ぐらい日本の会社で会社員をやってました。2011年まで。変な話、会社員生活の中で、しっかりとした文書の書き方とかも勉強できて。


そのときに弟も日本に住んでいたんですが、弟が「ハーフの会っていう面白いのができたから、今度一緒に行こうよ」って。それで、弟と一緒にいって、いろんなハーフの人と知り合いになりました。


そうしたら、それまで自分が「ハーフ」として経験してきたことを、わたしだけではなく、多くのハーフの人が経験していたことが分かって。たとえば自分が日本語で相手に話しかけても英語で返されるとか、欧米人顔をしているハーフの日本での「あるある」なんですよね。わたしだけじゃなくて、みんな経験してるんだなって。


それで、みんなそういう同じ思いをしているんだったら、「発信したい」と思うようになって。ネタを集め本にしたいと思い、中央公論新社(中公新書ラクレ)で出版が決まりました(これがハーフが美人なんて妄想ですから!!」中公新書ラクレ)。出版が決まってしばらくして勤めていた日本の会社を辞めました。ハーフを考えよう!」というウェブサイトを立ち上げたのもこの頃です。


「ハーフ」についての発信はながーく続けていこうと思っています。もちろん若いときには本気で悩んでいたものが、中年になってそれが緩和されてくるっていうのはあるんだけど。かといって、自分がハーフであることには変わりないので。自分からそれがなくなるって事は絶対ないわけで。だから、生きてるうちはまたいろんな「あるある」があるから。なにかあったらまた「ハーフを考えよう!」にコラムを書いて発信して。


ちなみに、わたしが書いたコラムに皆さんがコメントできるように、ウェブサイトの「コメント欄」にはこだわりました。長いコメントが折りたたまれてしまうと残念なので、皆さんがご自身の体験を長い文章で書いても全て載り切るような設定になっています。



Q:映画「HAFU」の監督さんや、写真プロジェクト「Hafu2Hafu」を企画したミヤザキさんもサンドラさんと同じ海外育ちですよね。



そうですね。今考えてみると、当時私が「発信しよう!」と思ったのは、日本ではなくドイツで育ったから、というのもあるかもしれません。茨城で育ったハーフのある女性が興味深いことを言っていたんですよ。例え話なんですが、水槽に魚がいて、そこで「少しずつ」「徐々に」水の温度を上げていくと、魚もピョンと逃げ出さないんだって。でも、海外に住んでいたハーフが日本に来ると、これとは逆のパターンで、「いきなり熱湯を浴びる」から大ショック。


例えば、日本で育った日米ハーフだったら、それこそ幼稚園のときから、「えー、○○ちゃんのお母さんはどうしてアメリカ人なの?」というような質問をされるのは、ある意味<日常>だから。そのときは、熱湯かもしれないけど、それがずーっと続くわけです。小学校、中学校、高校、大学、仕事の面接、就職…。ほんとにこう、少しずつ、お湯を足していって、足していって、最後にはアップアップになってしまうこともあるのだけれど・・・。


でももちろん日本にばかり問題があるわけではなく、たとえばドイツでもグローバル意識が欠けているところは所々あります。わたしがドイツにいると、自分から言わなければ「お母さんが日本人」だということは周りには分かりません。だから、話してる相手が、わたしの母親が日本人だということを知らずに、日本の悪口を言ってくる、なんていうシチュエーションもあるわけです。これなどまさに私にとっては急に熱湯をかけられたような気持ち。そんな時にも「やっぱり発信しなくっちゃ」と思います。わかんないですけどね、そのたとえ話があってるか。でもわたしは、彼女が言った「水槽」の例え話が結構しっくりきました。海外で育ったハーフが日本に来て、いろいろと理不尽な目にあうと、それを発信したくなる、という(笑)


日本で育ったハーフの人は、学校生活をおくる中で、大人になってから日本に来たハーフの人よりも、長い期間にわたって理不尽な目にあっていたりしますけど、それはいきなりではなく、徐々にだから、本人も気づかないまま、悩みだけが続く…ことも多いのではないかと。どうですか、研究者として?統計はとってないですよ、わたしも彼女も主観なので。観察した、感想なんですけどね。



Q:僕がしてきたインタビューでも、(差別や偏見に)「慣れた」とか、それを「流す」っていうことがよく聞かれましたね。うちの母親も同じなんですが、「慣れた」って。それまで人生の中ですっごい長い間いろいろ言われてきたから。それとあと、社会学の中で「ハーフ」というのは長い間テーマに取り上げられてこなかったんですよ。その背景は、やっぱりこういう発信が足りてなかったからかなと…。



そうですよね。確かに、いろいろなテーマの研究ありますけど、「ハーフ」についての研究ってあまりないですよね。団体もまだあんまり多くはないですよね。わたしが、『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』という本を書いたときにも、企画会議のときに、ある編集委員の方から言われたんですよ…。(続く)



***




サンドラ・ヘフェリンさん

1975年生まれ。ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから「ハーフとバイリンガル問題」「ハーフといじめ問題」など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』、共著に『ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』『爆笑! クールジャパン』『満員電車は観光地!?』『「小顔」ってニホンではホメ言葉なんだ!?』『男の価値は年収より「お尻」!? ドイツ人のびっくり恋愛事情』など。学校教育や「多様性」をテーマに講演活動も行っている。趣味は、執筆、時事トピックについてディベートすること、カラオケと散歩。



▼ウェブサイト「ハーフを考えよう」はこちら



Credit

語り手   

サンドラ・ヘフェリンさん


写真    

保高幸子 Sachiko Hotaka


聞き手・編集

下地 ローレンス吉孝

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