サンドラ・ヘフェリンさんへのインタビュー後半をお届けします!
サンドラさんはウェブサイト『ハーフを考えよう!』や書籍『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』(中公新書ラクレ、2012年)、『ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(メディアファクトリー、2013年)などで、「ハーフ」に関する情報発信を続けていらっしゃいます。「ハーフ」のテーマについて書籍を描いた際のエピソードについて引き続きうかがってみました。
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いろいろなテーマの研究ありますけど、下地さんが登場するまでは「ハーフ」についての研究ってあまりなかったんです。団体もまだあんまり多くはないですよね。わたしが、『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』という本を書いたときには、当初、企画会議のときに、「新聞やニュースでは使ってはいけない『ハーフ』という言葉を本のタイトルにするのは、いかがなものか。」という声もあったんです。
でも、編集者の人と私は「タイトルに『ハーフ』って使わないと、なんの本かわからないじゃないですか。」と言いました。「ハーフ」という言葉を使わないでなんて書けばいいかわからないですよね。例えば「半分日本人で半分外国人のわたしの話」とか、そうやって言い換えると、長くなるし、何の話かわからないじゃないですか。かといって、「ハーフ」を「日本語」で言えるかというと、それも難しいんです。「あいのこ」「混血児」がダメなのは言うまでもありませんが、「国際児童」や「国際児」という言葉も、子供はそれに当てはまりますが、大人に使える言葉ではありませんね。
だから、「ハーフという言葉は絶対につかってほしい」と伝えました。そうしたらまた次の会議で、「よく考えてみたら今まで、ハーフ当事者が書いたハーフの本は無いから出しましょう」ということになりました。本になったことは本当に感謝しています。でも本を出すってやっぱりこういうこともあるので大変ですよね。
ちなみにタイトルに関しては、私は「男はつらいよ」にちなんで「ハーフはつらいよ」または「ハーフもツライんです」というようなタイトルを希望していたのですが、そのタイトルだと何がツライのか分からないということで、営業の方がもっとキャッチーな「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」というタイトルを考えてくれました。
Q:本を書いてみて、読者からはどんな反応がありましたか?
反応としてはやっぱり、「ハーフ」の子をもつ親御さんとか「ハーフ」当事者とかからの本能がすごく多くて。手紙やメールで感想ももらいました。もちろん、身内にハーフの人がいないような人からも感想をいただきました。当事者や関係者からの反応はわりとポジティブなものが多くて、「よくぞ言ってくれました!」みたいな意見があったり。もちろん批判もありました。ページの最初の方にカテゴリー分けの表を書いているのですが、「それは失礼なんじゃないか」という意見ももらいました。
Q:書籍を読むと、単純に見た目の話だけではなくて、出身地とかその人の経済的状況とか言語とか、そういった単純じゃない、一人一人によって違っている状況もわかりますよね。
そうなんですよ。ハーフだと複数の言語を話せることを周囲から期待されたりもしますけど、本人の努力でどうこうできる問題じゃないこともあるんですよ。親の経済状況とか、教育の実践の仕方とか、親子関係そのものとか、いろいろな要素が関係してきますしね。
Q:本そのものの目的が、「ハーフ」のステレオタイプ(妄想)を解こうというメッセージが込められていたと思うので、そういう意味で画期的な本ですよね。サイトでの発信ではどんな反応がありましたか?
サイト「ハーフを考えよう。」は2011年からやってきました。わたしはもともとアナログなタイプで、ネットに詳しくないので、そういう意味でも大変でした(笑)。サイトのイメージとしては、親も子どもも見れるような健全なサイトにしたくて、宣伝とかも出ないようにしました。儲からないんですけどね(笑)。長いコメントも載るようになっていて、私が書いたコラムに対してもすっごく長いコメントくれる人もいて、本文より長いコメントをもらうこともあります(笑)。「ハーフ」のテーマはやっぱり複雑なので、そういうコメントも、折りたたんでしまうのではなく、全部閲覧できるようにしました。
Q:マイナスなコメントがくるとへこんだりはしませんか…
それはもう、年中ですね(笑)。サイトを立ち上げた時、ツイッターとかにもリンクを貼り付けていろいろと宣伝してみたんですけど、そういう時にコメント欄に「ブス」とか、そういうリプライも来たりして。私も暇な時は反論するのも嫌いではなかったりします(笑)。その中で一回「ブスって書いてるってことは、あなたはさぞかしイケメンなんでしょうね。次の投稿の際には、あなたの写真も添付してくださいね」って返事しました。それ以降返信は来ませんでした(笑)。
Q:そういう性差別的な反応があるのもなかなか大変ですね…。書籍やウェブなど、様々な形で発信を行っていらっしゃいますが、テレビについてはいかがですか?
テレビはもっと偏ってるから、番組の意向とかも関係してきますね。例えば、番組に出るとよく名札を用意されるんですが、そこに国旗も付いていたりするんですね。でも、日本とドイツの二つは絶対につかないんです。かならずドイツだけ。ドイツの国旗と、名前の「サンドラ」だけ書いてある名札です。日本にもルーツがある「ハーフ」ではなく、もう「ドイツの人」としてみなされる感じですね。そして、テレビで求められる外国人像っていうのはどういうものかというと、「観光客的なもの」が求められてるんですよ。
例えば、「日本で一番好きなものはなんですか?」という答えに対して、向こうが一番求めているのは「ウォシュレットが好き」なんですよ(笑)。でもこっちはもう20年も日本に住んでるから、いまさらウォシュレットに感動しないじゃないですか(笑)。テレビとしては、日本じゃないほうの国を目立たせたいんですよね。
Q:書籍、ウェブ、テレビなどなど発信する媒体によってもそれぞれの難しさみたいなものがあるんですね。それでもずっと発信を続けていらっしゃって本当にすごいと感じます…!
いえいえ。「ハーフ」というテーマに関しては、「ハーフが美人が妄想ですから!!」の後に漫画作品という形で「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」というコミックエッセイを出しました。更なる続編の予定はないですけど、今後もウエブサイト「ハーフを考えよう」で発信を続けようと思っています。大坂なおみ選手も話題になっていますしね。
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サンドラさん、インタビューにお答えくださりありがとうございました!
みなさんもサンドラさんの書籍やウェブサイト「ハーフを考えよう!」をぜひのぞいてみてくださいね!
サンドラ・ヘフェリンさん
1975年生まれ。ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから「ハーフとバイリンガル問題」「ハーフといじめ問題」など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』、共著に『ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』『爆笑! クールジャパン』『満員電車は観光地!?』『「小顔」ってニホンではホメ言葉なんだ!?』『男の価値は年収より「お尻」!? ドイツ人のびっくり恋愛事情』など。学校教育や「多様性」をテーマに講演活動も行っている。趣味は、執筆、時事トピックについてディベートすること、カラオケと散歩。
▼ウェブサイト「ハーフを考えよう」はこちら
Credit
語り手 :サンドラ・ヘフェリンさん
写真 :保高幸子Sachiko Hotaka
聞き手・編集:下地 ローレンス吉孝
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