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「自分の経験を交えて書くことでやっぱり伝わるのかな、って思って」野本らなさん、野本アブルさんインタビュー

更新日:4月8日


いま、中学校や小学校でどんな思いを抱えてどんな経験をしているんだろう。当時、中学校三年生と小学校六年生のきょうだい、野本らなさん、野本アブルさん(二人とも仮名)へインタビューしました。


(この記事は、書籍『「ハーフ」ってなんだろう?あなたと考えたいイメージと現実』に掲載されているインタビューです。書籍情報は記事の最後に記載しています。)




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らな:日本で生まれて、お父さんがバングラデッシュで、お母さんが日本の人です。


アブル:小学校のときは、変な名前って言われましたよ。今は大丈夫ですけど。


らな:幼稚園の頃は、ポジティブな経験で言うと、パパがいろいろ工作系が好きで、行動力がありすぎて、パパがいろいろな行事をしてくれて、逆に有名にはなって。だけど、小学校のときは、名前を書き間違えられたりとかはあったけど。あと、肌の色は…、(アブルは)「インド人」って言われたんだっけ?


アブル:「インド人」って言われたけど、インド人じゃねぇし。


らな:私は小学校の時に、「茶色いババア」で「茶ババ」って言われたんですよ。小学校中〜高学年の頃なんですけど。だから、そういうこともあって、中学は私立に行こうってなりました。私立で、新しく人間関係を再構築しようかなと思って。今までの自分だと、また同じことが起こるから、それを繰り返さないために変わるべきだなと思って、(中学校入学の)初日から様子うかがって。


アブル:私立って多文化なんだよね。


らな:ハーフもちょっといて。あと、先生がネイティブの英語の先生なので。


――そうすると、小学校のときは結構大変だったんだね…。


らな:いじめって言っても過言ではないですね。なんだろう、いじられてた感じ。正直、自分はあんまり言い返さずにいる感じで。言ったところで、相手に理解してもらえるのか、っていうのもあったし。もう、みんなと違うと…小学生ってみんなと違う人にたいしていろいろ言うじゃないですか。小学校三年生のときの先生が、そういう差別とかに敏感な人で。それに対して言ってはくれたけど。でも、4年の時の担任がすっごいいじられ系の先生にかわっちゃって、学級崩壊して…。若い先生で…。人が足りてないんですかね、小学校って。


アブル:僕の場合は、学校は居心地も悪くはないです。いじめられてもないし。


らな:やっぱり、父親が黒人だっていうので、黒人差別とかに敏感になるのもあるし。弁論大会でそのことについて原稿書いて、そしたら選ばれて。自分の経験を交えて書くことでやっぱり伝わるのかな、って思って。当事者じゃないとあんまり、差別ってわからないじゃないですか。(BLMについて)最初はニュースでみて、ひどいなとおもって、そのあとは自分なりにいろいろサイトとか見て、「ロザンゼルス暴動」とか調べたりして。歴史は繰り返されるじゃないですけど、同じことを、人間は学ばないのかな、とおもって。


――このインタビューで伝えたいことは何かありますか?


らな:差別を受けることに慣れていないし、普通でもないし、かりに自分がそうなった時のことを考えて欲しいっていうか。自分にされて嫌なことは人にするなって言うじゃないですか、本当にそうだし。あと、「日本人」が当たり前じゃないよ、っていうのは思って欲しい。日本人の感覚、「純日本人が日本では偉い」みたいな感覚は、自分の国だからそうなのかもしれないけど、世界に出たらいろんな人がいるし。だから、自分の中の「常識」は見直して欲しいなって。


アブル:固定観念をね。


らな:視点を、一つだけじゃなくて、いろんな角度から人を見て欲しいなって。「黒人だから考え方が間違ってる」とか、そういうわけじゃないし。日本人にはない考え方をもってるかもしれないし。もうちょっと、フレンドリーになってほしいっていうわけじゃないけど、心を開くって言うかな、なんていうんだろう…。


アブル:黒人を尊重してほしいってこと?


らな:尊重ではないんだよね、もうちょっと理解して欲しいっていうか。同じ人間なんだし、外見は違うけど、中身は変わんないんだからさ。自分の中の常識っていうのを信じ過ぎちゃってるのかな、そうすると、他の文化、多文化・多国籍の人を受け入れられないのかなっていう。


アブル:学校ではハーフじゃない人ともめっちゃ仲良いですよ。打ち解けられない部分も、歳をとるごとに減ってくと思うんですよ、実際減っていってるし。


らな:普通の日本人の友達とは、仲良いけど、ここまでしか仲良く慣れない、これ以上先にはいけないっていうのはあって。ちょっと、隠す部分というか、離せない部分があって。結局は話したりするんですけどね。


アブル:自分から距離を置かずにグイグイいけばけっこう仲良くなれるんですよ。


――話せない部分っていうのは、やっぱり宗教的な背景もあったりするのかな。


アブル:うん、僕は全然話して大丈夫なんですけど。言っても「へー」としか言われない。


らな:そこの感じ方って、ひとそれぞれですよね。すごい、こちらが勇気を振り絞っていったことに対しても「へー」としか言われないと、逆に、「おぉ」ってなっちゃう。言われた側もどんな反応すればいいのかわからないっていうのもわかるし。でも、学校の外国人の先生とかはすごい理解してくれたりするんですよ。


アブル:日本って、海外からきた人、海外から来たって言うか、関係をもっている人にたいして、冷たいじゃないですか。それは、僕たちみたいにハーフのひととか、ナチュラルに海外から来たひととか、日本人が海外に留学してそこから帰ってきた人も結構パワハラ受けるみたいだし。だから、なんていうか、日本って結構先進国じゃないですか、なのに海外に冷たいので。もっと、海外と関係をもってほしいんですよね。だからなんていうか、異文化を受け入れて欲しい。とは言っても、僕は日本から出たくはないんですけどね(笑)。異文化を受け入れてほしいです。ハーフの人が増えているのに、受け入れられないって言うのは…。


らなさんが中学校で書いた作文


先月二十五日、アメリカのミネアポリス郊外で、アフリカ系アメリカ人の黒人男性ジョージ・フロイドさんが警察官の不適切な拘束方法によって命を落としました。このニュースはテレビなどで広く報道されており、ほとんどの人が耳にしていると思います。警察官に道を押さえつけられた彼が「呼吸ができない、助けてくれ」と何度も何度も言っていたにもかかわらず、警察官は約九分間フロイドさんの首を膝で強く押さえつけ、反応がみられなくなった後の約三分間においても押さえつけていました。彼は自分を押さえつけている警察官に何度も「プリーズ」と言いながら亡くなっていったそうです。この映像を見るたびに激しい怒りを覚えます。この出来事が黒人差別問題にさらに火をつけました。


今世界中の人々が新型コロナウィルスによって日常を脅かされています。アメリカでは感染者、死者共に多くの割合を占めており、その中でも人口十万人あたりの死者数は白人が二十二人、黒人が五十四人となっています。黒人の死者数が白人と比べて二倍以上になっていることにとても驚きました。ここにも人種差別の匂いを感じ、自分なりに考えてみました。貧富の差が激しかったり、人種差別によって十分な治療を受けられない黒人がたくさんいるのではないかと。今はみんなが辛い思いで同じ状況なのにそれでも尚差別をする。楽しいのでしょうか?何を求めているのでしょうか?何がしたいのでしょうか?私は思います。黒人だから何かをしてはいけないなんておかしな事だと思いませんか?世界には自由という言葉があります。黒人が何をしようと自由なのです。


私の話をします。私の父はバングラデシュ人で母日本人です。黒人と日本人のハーフなので当然父の要素を持っています。その上私は弟に比べて父に似ているので日本人とは少し容姿が違います。小学生の頃クラスメイトに名前や肌の色、家族のことでからかわれたり、ゴリラと言われたり茶色いものに例えられたり、色々なことをされました。思い出すだけで胸が苦しくなります。当時も今も私は思い続けています。どうしてみんなと違ったらダメなの?どうして人を見た目で判断するの?答えは見つかりません。世界には人種差別問題を歌った曲がいくつもあります。「生まれたところや皮膚や目の色で一体この僕の何がわかるというのだろう」本当に共感します。また、イギリスのミュージシャンの曲に「人種の壁を超えてみんなで一緒に生きよう、ピアノの鍵盤のように左右に並んで。なぜ俺たちはそれができないんだ、人間はみんな同じ、誰にだって良いところも悪いところもある。必要なのは力を合わせ、共に生きるということだ、白人と黒人」という歌詞があります。この歌詞の通り人間はみんな同じ、何一つとして違いはないのです。


でも人種であれ性差やLGBTであれ、そもそも差別とは体験してこそ初めて自分ごととして理解できる。他人の悲しみに寄り添うことはできても、当事者にならない限り差別を受けている人の真の思いを測り知ることは難しいと思います。でもこれだけはお願いです。もう二度と同じことを繰り返さないで、絶対に差別はしないで。誹謗中傷を受けることはとても辛いです。何度も何度も言葉のナイフで心を抉られ、もう元には戻りません。一度言われたことは今でもずっと覚えています。


私は今まで自分の辛い過去を人に話すことを避けていました。話したらまた同じことが繰り返されるかもしれないと思い、怖くて話せませんでした。でも言わなきゃ何も伝わらない、少しでも多くの人に世界の現状を知ってもらいたい。また、身近な人にもいるかもしれない、だからどんなことがあっても差別しないで、黒人の命も大切ということを忘れないでください。これ以上黒人の命を奪わないでください。もう人が苦しむ姿を見たくはありません。いつか世界中の人が見た目ではなく、人格で評価される日がきますように。



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インタビュー:下地 ローレンス吉孝

(※この記事は、書籍『「ハーフ」ってなんだろう?あなたと考えたいイメージと現実』に掲載されているインタビューのロングバージョンです。)



◆書籍情報◆


「ハーフ」ってなんだろう?あなたと考えたいイメージと現実

平凡社、4月21日発売予定

本体価格1,600円

目次

第1章「ハーフ」の問題は社会の問題なの? 

1 社会の問題として考えるってどういうこと?

2「ハーフ」の日常ってどんな感じ?

第2章それぞれの経験が複雑ってどういうこと?

第3章「ハーフ」のイメージと現実は違うの?

1「ハーフ」の歴史は日本の歴史なの? 2「ハーフ」のイメージはどうやって作られたの?

第4章「当たり前を問い直す」ってどういうこと?  

1差別ってなんだろう?  

2だれも「偏見」から逃れられないの?

第5章メンタルヘルスにどう向き合うといいの?


●各章の間に多くのインタビューを掲載しています!

●一人一人の経験、差別、社会構造と歴史、メンタルヘルス、人権など。ぜひお手に取り下さい。

出版社(平凡社)の書籍情報はこちら


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