Hafu2Hafuプロジェクトをすすめるテツロウさんへのインタビューの後半です!(前半はこちら。)
——このプロジェクトで意識していることはどんなことですか?
このプロジェクトではいま、ハーフの中でも「ダイバーシティ(多様性)」を求めています。簡単に言えば、いろんな国から来ている人とインタビューをしたいと思っています。アフリカやアジアのルーツとか、ルーツのダイバーシティを探していて。もう一つは、「年齢」です。歳も違うと経験も違いますよね。例えば今10歳のハーフと、70歳のハーフだと、経験がすごく違ってくる。そして、もう一つは、実は、このプロジェクトに「参加したくない」という人にも話を聞いてみたいんです。このプロジェクトに興味ない人にも。それで、なんで興味がないのか、ということを知ってみたいと思っています。どうして参加したくないのか、ということも知ってみたいんです。
——ハーフのコミュニティに対しても、「特に興味はない」っていうひとはもちろんいますよね。
そうですよね。自分の生活に満足しているから自分の経験については話したくないっていう人もいます。ちょっとだけ怒っている人もいます。怒ってて話したくない人もいて。そういった話自体も、このプロジェクトにぜひ入れたいんですよね。だいたい、今集まってるひとは、興味がある人なので。
——その両方の声も聞けると、よりこのプロジェクトが広がりますね!
あと、もう一つ聞きたかったことがあります。いままで、このプロジェクトをはじめたきっかけみたいなところを聞いてきたのですが、このプロジェクトを進めていく中でどのようなことを経験しましたか?参加者の反応とか。
はじめて、ヨーロッパと日本のルーツのハーフではない人と会ったことで、すごく私の世界観が広がったんですよ。アフリカと日本とか、ほかのアジアの国と日本とか。日本でハーフっていうと、だいたい白人と日本人っていうイメージが強いですよね。でもアフリカ系のハーフの人だと、ハーフというよりは、外国人に見られてしまうことが多いそうです。あとは、育ってきた環境や名前などもすごく関係しています。例えば僕は、「テツロウ」だから、「えっ?」って、「外国の名前ついてないの?」って聞かれたりします。
アフリカ系の人と、白人系の人と、アジア系のハーフでは、それぞれ経験が違うんですよ。そして、日本で育ってるか、外国で育っているか、ということによっても経験がすごく違ってきます。
あとは、このプロジェクトで、国へ結びつくステレオタイプも変えたいと思ってます。たとえば、「オランダ」って言えば、金髪とか、白人っていう人だけじゃなくて、オランダ人には黒人もいるし白人もいるしアジア人もいるんですよね。
このプロジェクトやっていると、たまに、「でも、あなたって日本人じゃないよね?」って言われたりもします。でもその時に思うのが、「じゃあ、その『日本人』ってなんですか?」っていうことです。そして、その返事を聞くことは本当におもしろいんです。そこからディスカッションが広がるんです。「日本人ってなに?」っていうディスカッションが。ローレンスさんの場合は、国籍は日本でしょ?
ーーそうです。
ハーフか、クォーターかで言ったら、クォーターですよね。そして、お母さんは日本国籍ですか?
ーーそうですね。
そうしたら、「日本人」って言えるじゃないですか。でも、「日本人論」ってありますよね。そこでは、見た目が日本人で、言葉も日本語で、日本の文化をしってて、っていうイメージがそこにはあります。両親が両方とも日本人なら、日本人って言えますよね。でも、ローレンスさんの場合は、お母さんがハーフだから日本人じゃないって言われちゃいますよね。でも、実際には、祖父母やもっと先祖をさかのぼれば、中国とか韓国のルーツもあって、この東京に住んでる人も、100%日本人っていうのはいないんじゃないですかね。それを、どの世代までさかのぼれば、いつから日本人って言えるのかって考えます。そういうことを考えるのもおもしろいんです。そして、例えば日本で生まれたけど、ずっと海外で暮らしていて、日本に戻ってきた人がいますよね。あとは、両親ともに日本人だけど、外国で生まれて、日本語も話せなくて、15歳ぐらいの時に日本にきた人は、「日本人」って言えますか?そういうディスカッションをするのは本当におもしろいなと思います。答えはわからないことだから、僕は質問をするんです。
あとは、「日本人よりも、日本人みたいだね」っていうこともたまに言われます。それは、日本人じゃない人にしか言わないことですよね。日本人には言わないでしょ?それは、日本人とはみなされてないから、言われちゃうんです。言ってる人は褒め言葉として言ってるんだと思うんですけど、あんまり聞きたくないっていうひともいると思います。たぶん、「すごくよく頑張ってる外国人」っていうふうに見られちゃってますから。
——このプロジェクトって、やっぱり「答え」じゃなくて、「質問を問いかけてみる」っていうところがすごくポイントな気がしました。写真を見る人が問いかけられるっていうこともそうだし、もしかしたら日本社会が問いかけられてるというか。この展示をアメリカでやれば、アメリカ社会が問いかけられてるというか。
そうですね。このプロジェクトは、メインは日本とのハーフっていうことなんですが、実は、「日本」の部分を、他の国とも入れ替えても考えられるんですよ。「日本」の部分を、「イラン」にもできるし、「アメリカ」にもできるし。だから、ハーフというより、ミックスというか、アメリカでもだからこのプロジェクトに興味がある人が多いんだと思います。ミックスルーツのアイデンティティについて考えること、社会問題とかも含めて、どの社会でも同じなんだと思うんですよ。どこでも同じように聞かれますから。アメリカでも展示して、ヨーロッパでも展示したんですが、どこでも同じように答えてくれる人がいましたから。ハーフのことも、帰国生のことも、日本だけの問題じゃなくて、オランダでもあったりするんです。アイデンティティの問題は、全く同じというわけではないんだけど、共通する部分が多いと思うんです。
——日本でハーフについて発信してる人が少ない気がするんですが、そこについてはどうおもいますか?
日本で暮らすハーフの人たちは、あんまり自分たちの問題をかたろうとはしないですよね。でも、実際に話を聞いてると、いろいろ問題はあって。それは、そういうことを発信すると、周囲が「弱い」と思ってしまうからなんじゃないかと。例えば、日本でハーフの子が差別された時って、差別した相手が悪いだけじゃなくて、差別された方も悪いってみなされるときがありますよね。たとえ周りの人に相談しても、「我慢しなさい」と、「しょうがない」っていうことが、そういう時によく言われますよね。
だから、このプロジェクトを通じて、ハーフも、周りの人も、社会の中でも、このテーマについて話し合いの場が広まればいいなと思ってるんですよ。
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▼Hāfu2Hāfuのホームページはこちら http://www.hafu2hafu.org
▼現在、テツロウさんは来日してインタビューを行なっています!
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ミヤザキ・テツロウさん
ミヤザキ・テツロウさんは、ベルギー人と日本人との「ハーフ」で写真家。かれはブリュッセルで育ち、夏休みはほとんど日本の九州で彼の家族と過ごした。ベルギーでは「ハーフ・ジャパニーズ」として、日本では「ハーフ」としてのアイデンシティティを抱いていた。
2016年、テツロウさんは世界192カ国の日本の「ハーフ」の経験と自分の経験とを比べようと決めた。そして、「ハーフである」ということが何を意味するのかを探し求める写真プロジェクトとして「Hāfu2Hāfu」を開始した。「ハーフ」の人々のポートレイト写真とインタビュー。そして、その写真を見ている「あなた」に対して、自己認識に関するユニークな質問をシェアすることで、アイデンティティや自分自身を見つめ返すきっかけとなる対話を作り出す。テツロウさんは現在、72カ国、110名のインタビューを行なっている。
Tetsuro Miyazaki is a half Belgian and half Japanese photographer. He grew up in Brussels and spent most of his summer holidays with his Japanese family in Kyushu. For most of his life, he has identified as ‘half Japanese’in Belgium or ‘hāfu’when in Japan.
In 2016 he decided to compare his experiences with 192 Japanese hāfu: one from every country in the world. This resulted in Hāfu2Hāfu; a photographic project in which he investigates what it means to be hāfu. By portraying and interviewing other hāfu and by sharing their unique identity related question to you –the viewer –we create a dialogue about identity and stimulate self-reflection. He has currently photographed 110 hāfu from 72 different countries.
インタビュアー:セシリア久子・下地ローレンス吉孝
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